【Book紹介】「楽器奏者あるある」を描いた、爆笑必至の音楽書(茂木大輔著「オーケストラ楽器別人間学」)
(www.audio-luci-store.it)
日本に音楽ストリーミングサービスが普及しはじめた。
定額でどんな音楽も聴き放題となったこの機会に、普段聴かないジャンルに手を伸ばしてみてはいかがだろう。
たとえば、クラシック音楽。特に大編成のオーケストラ曲なら迫力も桁違いなので、最近の暑さにうだる身体にも効くだろう。
気分もスカッと奮い立たせてくれておすすめだ。
その時のお供にぜひ読んでいただきたいのが、『オーケストラ楽器別人間学』である。
著者は、オーボエ奏者・指揮者の茂木大輔氏。
たくさんの楽器奏者たちを長年見てきた彼が、緻密な人間観察と分析に基づき、本書で妄想を爆発させている。
チェロ奏者――広島で大学教授の家に生まれている。兄弟はいない。
(中略)家は母と同居のマンション。車はワゴン。
こうした詳細な人格設定から、楽器別デートの誘いかた、飲み会の雰囲気など、
様々な切り口から「あるある」を語る。それらの根拠も、ユニークかつ事細かい。
本書を初めて読んだのは、私が音楽大学へ入学した頃。
演奏楽器がピアノだったこともあり、オーケストラ関係の楽器奏者の友人は少なく、
内容に実感が持てなかったため懐疑的であった。
しかし音楽業界で働き始めてから読み返すと、その分析の的確さに、大いに笑い転げた。
おすすめは、第三章内の『有名人による架空オーケストラ』。
ビートたけし、ユーミン、石原慎太郎らに、著者が最適な楽器を紹介している。
楽団に所属した場合の立ち居振る舞いまで考え抜かれており、その細かさには舌を巻く。
デューク・トウゴウ、アンパンマンといった架空のキャラクターまで登場し、その真面目な分析とチョイスは抱腹絶倒もの。
軽快な文体で、すらすらと読めてしまう。
楽器を元素記号にたとえた『弦素、管素とその化合物』は、根っからの文系である私にはピンとこないのだが、人を選ばず笑える読み物といえるだろう。
本書を読んでからオーケストラ曲を聴いてみれば、奏者の顔まで見えてくる。
『楽器別適性判別クイズ』も収録されているので、自分にはどの楽器が合うのか、診断してみてはいかがだろうか。
ちなみに、私は何度やっても打楽器奏者だ。
◇ ◇ ◇
某所に提出した文章を、加筆修正して載っけてみました♪
この本、だいぶ前に敢行されたものですが面白いです。そこまで断言して大丈夫…?となるくらい妄想を膨らませているのが最高。笑
この本を読んだばっかりだったので、東大オケに余計びっくりしたところもありました…。笑