「初夏の気配を感じる、晴れた湖畔のほとりで」(クラシック妄想えんむすび)
私は、この楽曲に人生を変えられてしまった。
初夏だ!
宝石が弾けるような喜びを与えてくれるその曲は
湖面のようにキラキラと色彩を変え
鍵盤を縦横無尽に駆け巡る。
不意に、喧噪のさざめきは落ち着いて
ふわりとその表情が翳る。
底抜けの明るさから がらりと変わり
旋律は哀しみを増し、あなたの気を惹いてくる。
あまりの甘美さに うっとりと身を預けてしまうと、
また カラリと晴れやかな日差しで
目を心地よく刺激してくる。
彼女はドレスを翻し くるくる踊りながら
溢れんばかりの笑顔であなたをからかう。
瞬く間にあなたは
目の前にいる 美しく気まぐれな彼女の
挙動に夢中になってしまうだろう。
音楽との間に落ち着きを求める人には 疲れる相手かもしれない。
でも 日常に退屈して
人生に"なにか"の登場をずっと待っている人がいるなら・・・
彼女は きっとあなたを満足させてくれるだろう。
全力で愛を歌い 涙を流し
感じたままに行動することをいとわない彼女。
たくさんの人を惑わす魔性の女だ。
たとえ惚れてしまったとしても 心配はいらない。
誰かに奪われることはないし、
どこかへふらりと飛んでいってしまうこともない。
永遠に独占することもできる。
彼女は、音楽だから。
この曲に出会って7年。私は今も彼女に魂を奪われたままだ。
クラシック音楽は長いし、妙に落ち着き払ってるし、
聴き所がわからなくて・・・。
そんな曲ばかり、耳にしてきた気がするあなたに
魅力的な8分半をおすすめします。
E.グラナドス / 演奏会用アレグロ
(Granados / Allegro de concierto)
◎聴くのにおすすめのシチュエーション
・初夏の気配を感じる晴れた湖畔のほとり
◎この曲をおすすめしたい人
・ありのままに生きるってなんだろうと考えている人
・無邪気で気分屋な人
・無邪気で気分屋な人に惹かれちゃう人
曲が進み終盤に差し掛かった頃、彼女は激情に任せて歌う。
その直後、まるで意識を失ったかのように生気をなくす。うわごとのように力なく旋律を反芻する姿に、私は涙を我慢できない。
時間にしてたった20秒で、彼女はいつも私を泣かしてくるのだ。