音楽系女子のコン活事情

クラシック音楽に興味はあったけど、機会がなかったあなたへ。【コン活(=コンサート鑑賞活動】おすすめします

個性としての高貴さと、ロマン派との幸福な出逢い(『阪田知樹~ロマン派ピアノ音楽の世界~』レポート)

 

またぜったい聴きに行く!

と、締めのような言葉でレポートを始めたくなるほど、今回の公演、素晴らしかったです。

TheGLEEさんで行われた、阪田知樹さんのピアノリサイタル!

 

 f:id:classic-qupid:20150325192446j:plain

 

阪田さんといえば、コンクールの受賞歴も華々しく、

世界各国で演奏活動を展開されている、日本でも指折りの若手ピアニスト。

 

つい先日まで放送されていた人気アニメ「四月は君の嘘」の主人公・公生の演奏のモデルアーティストも務めています。

(どことなく風貌もモデルアーティストっぽいですよね。うん。)

 


TVアニメ「四月は君の嘘」番宣CM 第1弾 30秒 [1080p] - YouTube

 

私もピアノ専攻の末端として、常に阪田さんのお名前だけは聞いたことがあったのですが

なかなか演奏を聴く機会がなく。

今回が初でした!そしてその凄さに今も思い出してはぶるぶる震えております。

 

1曲目は、ベートーヴェンピアノソナタ『告別』」全楽章。
いわゆるベトソナ、わたしはHJリムなどのインパクトの強い(いや、強すぎる!)演奏を最後に聴いていたせいか、
阪田さんの演奏はとっても正統派に感じます。

 


たしかに正統派な優等生演奏だけれど、同時にイメージしやすい、お堅いとかつまらないという要素は微塵もなく!


粒立ちが良く、けして濁らない響き。
滑らかさの中でも随所に輝くカリスマ性を感じさせる音色は、まるで

王様がマントを翻すかのような勇壮さ、威厳を思い起こさせました。

 

王様の品を感じさせる、高貴なベートーヴェン

しっかり楽譜を読み込んだ人にしか弾けない、理論に基づいた演奏をされていてとても好きでした。

 

そんな私のロイヤル気分をそのまま保たせてくれるように

シューベルト=リスト「ウィーンの夜会 第6番」、リスト「忘れられたワルツ第1番」と、ワルツものが続きます。

 

10本の指で楽団を指揮するように、ピアノの音色を自在に堅実に操る阪田さん。

ワルツの三拍子は日本人にはなじみが薄いと言われていますが、

阪田さんは完全にモノにしていて、ワルツのリズムの中で優雅にステップを踏む音楽に、私の心まで気持ちよく踊りました。

 

前半の最後に演奏してくれたのは、リスト「ハンガリー狂詩曲 第6番」。

この曲、こんなにリズミカルだったんだ…!と熱狂してしまいました。


弾く前に阪田さんは「聴くだけで楽しんでいただけると思います」と言ってたけれど

この曲、聴き手が楽しむのって意外とハードル高いと思っています。

弾き手が少しでも苦しんでいると、聴き手にすぐ伝わってくるから。

(まあどの曲でもそうなんですけど、この曲は弾くのが特 に難しいので!)


この曲、音大生(または音大受験生)御用達なので、過去に友人の演奏で何度か聴いてきましたけど

技術面でいっぱいいっぱいになってしまい、

途中で崩壊しかけたり、リズムが崩れたりして「がんばれ~!」ってなるような演奏をする人も多かったりします。

 

私にとって、そんなイメージがちょっとだけついてしまった曲を、阪田さんは

「超絶技巧だけれど、息をするように自然に。」

聴き手に負担をかけず、理想的に音楽を構築し、楽しんで、楽しませてくれました。

 

 

 

少しの休憩をはさんで後半へ。

阪田さんの構築する"音の層の美しさと拘り"を存分に感じられる

ブラームス「3つの間奏曲 作品117」からでした。

 

ひとつひとつ個別に拾い上げても美しい音たちが、阪田さんの手によって素晴らしく積み上げられて調和されているのを聴いていると

厳選された上質な素材を使って一流パティシエが手がけた

ミルフィーユを堪能している気持ちに…。(私おなかすいてたのでしょうか…。)

 

f:id:classic-qupid:20150325193020j:plain

 

ブラームス、悲しみを抑えたように始まった2つめの間奏曲が特に好きでした。最高。

 

 

続くチャイコフスキー「サロン風ワルツ」は、「くるみ割り人形」や「眠りの森の美女」を連想させる、可愛らしく軽やかな風を纏っていました。

 

チャイコフスキーラフマニノフの「子守歌」は阪田さん曰く、「有名ではないけど、個人的にとても好きな曲」。

チャイコフスキーが原作であるけれど、ラフマニノフの謳いまわしがうまく表れていて、また少し違った風味でした。

そして、ラストのチャイコフスキー「主題と変奏」は、ただただ圧巻…。

 

アンコールのショパンは、

思わず「おお、ロマン派のキラキラだ…!」と感じるほどに即興的で、軽快。

ブラームスの演奏とは大違い!

 

 

そう、どんな曲を弾いても、彼はずっと高貴でした。ハリボテの成金感など一切なく、ただひたすらに、本物。誰が見てもわかる上質なもの、という感じです。

ロイヤルなのに、ハンガリー狂詩曲のときは少しだけ土臭さも感じさせられる不思議…。

 

阪田さんのカラー(=生まれ持った高貴さ)は失わないまま、

全ての作曲家の世界を弾き分ける力があって、

それはなんだか、存在感はあるけれど、演じる全ての役が違う人に見える俳優さんのようでした。

 

 

今回のリサイタルのタイトルは、「ロマン派 ピアノ音楽の世界」でしたが、

そのなかでベートーヴェンチャイコフスキーを選曲した理由や、楽曲の背景、

アンコールでの選曲理由など、阪田さん自身がマイクを使ってたくさんお話ししてくれました。

 

会場にいらしていた、よく阪田さんの演奏を聴きにいってらっしゃる人曰く

阪田さんは普段、演奏する場であまり話す人ではないのだそうです。

今回は雄弁に彼の想いが聞けたので、

とっても貴重な公演だったのかもしれません。

 

 うう、最初の言葉に戻ってきますが

また絶対聴きに行きたい・・・!!